【第1回】A4用紙1枚と「4つの枠」で描く、迷わない現状分析

「経営計画書を作りたいけれど、何から手をつけていいかわからない」 「本を読んでみたけれど、難しすぎて途中で挫折してしまった」
そんな院長先生・経営者の皆様のために、以前のコラム「未来を創る「経営計画書」作成の5ステップ」に基づいて、「これだけ埋めれば完成する!経営計画書の作り方」と題して全5回の連載でお届けします。難しい理論は抜きにして、実務ですぐに使える手順だけを厳選しました。是非ご活用ください。
▼ 経営計画作成ロードマップ(全5回)
Step 1. 現状分析(自社を知る) ★今回はココ!
Step 2. 経営理念・ビジョンの再確認(目的地を決める)
Step 3. 基本方針と戦略の策定(ルートを決める)
Step 4. 数値計画の作成(マイルストーンを置く)
Step 5. 行動計画(アクションプラン)への落とし込み
第1回となる今回のテーマは、計画作りの土台となる「現状分析」です
「分析」と聞くと、市場調査や競合データ集めといった面倒な作業をイメージされるかもしれません。しかし、最初から完璧なデータは必要ありません。まずは、先生の頭の中にあるモヤモヤを紙の上に「見える化」することから始めましょう。 今回は、A4用紙1枚とペンさえあればできる、最もシンプルな整理術をご紹介します。
難しい分析は不要!A4用紙を十字に区切るだけ
経営分析の基本フレームワークに「SWOT(スウォット)分析」というものがありますが、名前を覚える必要はありません。やることは非常にシンプルです。
まず、A4用紙を横長に置き、真ん中に大きく十字の線を引いてください。これで「4つの枠」ができましたね。 この4つの枠に、以下の視点で思いつくことを書き出していきます。

- 左上:自院・自社の良いところ(強み)
- 右上:自院・自社の悪いところ・課題(弱み)
- 左下:世の中や地域の良い変化(機会)
- 右下:世の中や地域の悪い変化(脅威)
たったこれだけです。上段は「自分たちのこと(内部)」、下段は「周りの環境のこと(外部)」を書きます。
主観でOK!「4つの枠」を埋めるコツ
いきなり客観的な「分析」をしようとせず、まずはメモ書き感覚で埋めていくのがコツです。
内部のこと(上段の2枠)
ここには、病院の中にある「ヒト・モノ・カネ」について書きます。
- 良いところ(強み): 「スタッフが明るい」「最新のエコーがある」「立地が良い」「院長が外科得意」など。
- 悪いところ(弱み): 「待合室が狭い」「スタッフの定着率が悪い」「駐車場の入り口が分かりにくい」など。
「これは強みと言えるほどのものか?」と迷う必要はありません。院長先生が「良い」と思えば、それは立派な強みの種です。
外部のこと(下段の2枠)
ここには、ご自身ではコントロールできない外の環境について書きます。
- 良い変化(機会): 「近くに大型マンションが建った(ペットが増えるかも)」「ペットの長寿化が進んでいる」「新しい治療法が注目されている」など。
- 悪い変化(脅威): 「近所に競合病院ができた」「原材料費が高騰している」「地域の人口が減っている」など。
今すぐできるアクション
難しく考える必要はありません。今日の診療後の5分間だけ、以下の手順を試してみてください。
書き出す際のアドバイス
- 否定しない: 書いた内容に対して「でも…」と打ち消さないでください。
- 量は質に勝る: 最初は些細なことでもいいので、数をたくさん出すことを目指しましょう。
- スタッフを巻き込む: もし可能なら、スタッフにも同じ紙を渡して書いてもらいましょう。「先生、うちは電話対応が丁寧だと飼い主様に褒められますよ」など、自分では気づかない「強み」が見つかることがよくあります。
さいごに
書き出した「4つの枠」を眺めてみてください。「競合が増えている(脅威)けれど、うちはスタッフが明るい(強み)から、接遇を強化して差別化しよう」といった対策が、自然と見えてきませんか?
これが立派な「経営戦略」の第一歩です。 高尚な理論よりも、まずは院長先生の頭の中にある情報を紙に落とし込むこと。そこからすべてが始まります。
次回、第2回は【経営理念・ビジョンの再確認】編です。今回書き出した「4つの枠」を組み合わせて、具体的な「勝ち筋」を見つける方法をお伝えします。お楽しみに!
今回の記事のポイント
・経営計画作成は全5ステップ。今回は第1ステップの「現状分析」。
・難しい計算は不要。紙を十字に区切り「4つの枠」を埋めることから始める。
・最初は主観でOK。迷わず書き出すことで、次回の「経営理念・ビジョンの再確認」につながる。
動物医療 × DX × 中小企業診断士
大澤 正己


