「伝わらない」もどかしさを解消!経営理念とビジョンが組織を変える理由

「これだけ良いサービスを提供しているのに、なぜお客様に響かないのだろう?」 「何度言ってもスタッフが受け身で、熱量の差を感じてしまう…」

日々の経営の中で、このような「孤独」や「もどかしさ」を感じることはありませんか? 特に、技術やサービスに自信がある動物病院の院長先生や、現場第一で走ってこられた中小企業経営者様ほど、この悩みに直面しやすい傾向があります。

プロモーションの手法を変えたり、待遇を改善したりしても状況が変わらない場合、問題の本質は「How(やり方)」ではなく「Why(なぜやるのか)」が共有されていない点にあるかもしれません。

今回は、組織の求心力を高め、顧客のファン化を促すための「経営理念・ビジョン」の重要性についてお話しします。

なぜ、経営者の想いは伝わりにくいのか

経営者であるあなたの頭の中には、明確な「理想の未来」や「大切にしたい価値観」があるはずです。しかし、それが明文化されていない限り、それは他者からは見えない「暗黙知」のままです。

従業員や顧客は、日々の業務やサービスという「点」しか見ることができません。その背後にある「なぜその治療が必要なのか」「なぜこのサービスを提供するのか」という「線(ストーリー)」が見えないと、どうしても表面的な受け取り方になってしまいます。

  • 従業員: 「院長(社長)の指示だからやる」という作業になり、自律性が生まれない。
  • 顧客: 他社(他院)との違いが分からず、価格や立地だけで比較されてしまう。

このように、「判断の軸」や「目指す旗印」が見えていないことが、伝わらない原因の多くを占めています。

経営理念とビジョンがもたらす2つの効果

経営理念(ミッション)とは「企業の存在意義」ビジョンとは「将来ありたい姿」のことです。これらを策定し、社内外に明示することは、単なる言葉遊びではなく、経営に以下のような具体的な効果をもたらします。

1. スタッフのエンゲージメントと定着率の向上

給与や待遇はもちろん大切ですが、人は「意味」を感じられる仕事に情熱を注ぎます。 例えば、動物病院において「ただ患部を治す」ことだけを目標にするのと、「動物と家族の幸せな時間を1秒でも長く守る」という理念を共有するのとでは、スタッフの行動が変わります。

理念という「共通の判断基準」ができることで、スタッフは「今の行動は理念に合っているか?」と自ら考えられるようになります。これが仕事への誇りを生み、離職率の低下やモチベーション向上に直結します

2. 顧客への強力なブランディング

現代の消費者は、商品やサービスのスペックだけでなく、「その企業が何を大切にしているか」というストーリーに共感してお金を払います。 明確なビジョンを掲げている企業は、プロモーションにおいてもメッセージに一貫性が生まれます。「私たちの病院(会社)は、こういう世界を目指しています」と宣言することは、それに共感する「濃いファン」を引き寄せる最強の集客ツールとなるのです。

経営理念やビジョンを策定することは、経営者としての「決意表明」でもあります。 最初は照れくさいかもしれませんし、言葉にするのが難しいと感じるかもしれません。しかし、その「想い」こそが、他社には真似できない最大の差別化要因です。

一本芯の通った理念があれば、迷った時の羅針盤となり、同じ船に乗る仲間(スタッフ)や応援団(顧客)を必ず増やしてくれるはずです。ぜひ一度、立ち止まって言葉にすることから始めてみませんか。

今すぐできるアクション

「創業時の想い」を3行で書き出してみる

まずは手帳やスマホのメモ帳を開き、以下の質問への答えを書き出してみてください。

  1. なぜ、この事業(病院)を始めたのか?
  2. 一番嬉しかったお客様(飼い主様)からの言葉は何か?
  3. 10年後、会社(病院)がどうなっていたら最高か?

これらを書き出すことが、理念策定の第一歩です。難しく考えず、まずはご自身の「原点」を振り返ってみましょう。

さいごに

「頭の中にはあるけれど、うまく言葉にできない」 「日々の業務に追われて、じっくり考える時間が取れない」

そう感じられる経営者様は、決して少なくありません。自分一人で考え込むよりも、第三者に話すことで思考が整理され、驚くほどスムーズに言語化できることがあります。

当事務所では、経営者様の想いを引き出し、経営理念やビジョンの策定、そしてそれを現場に浸透させるための「経営計画書」の作成支援を行っております。 あなたの想いを、組織を動かす力に変えるお手伝いをいたします。まずは壁打ち相手として、お気軽にご相談ください。

今回の記事のポイント

・想いが明文化されていないと、業務の背景にあるストーリーが見えず周囲に響かない。
・理念は共通の判断軸となって社員の自律性を高め、共感による強力なファン作りにもつながる。
・まずは創業の原点や理想を書き出し、第三者との対話を通じて思考を整理・言語化する。

動物医療 × DX × 中小企業診断士
大澤 正己