【第2回】現在地の次は「目的地」を。3年後の理想を箇条書きにする未来地図の描き方

日々の診療や現場対応、本当にお疲れ様です。 前回の記事では、経営の「現在地」を知るための「SWOT分析(強み・弱みの整理)」についてお伝えしました。
自分の強みや課題が少し見えてきたところで、次に必要なのが「で、結局どこに向かいたいんだっけ?」という「目的地」の設定です。
▼ 経営計画作成ロードマップ(全5回)
Step 1. 現状分析(自社を知る)
Step 2. 経営理念・ビジョンの再確認(目的地を決める) ★今回はココ!
Step 3. 基本方針と戦略の策定(ルートを決める)
Step 4. 数値計画の作成(マイルストーンを置く)
Step 5. 行動計画(アクションプラン)への落とし込み
第2回のテーマは、「経営理念・ビジョンの再確認」です。
カーナビでも、現在地がわかっただけでは動き出せません。目的地を入れて初めて、最適なルートが表示されますよね。経営もまったく同じです。
しかし、「経営理念」や「ビジョン」と言われると、「何かかっこいい言葉を使わなきゃ」「社会貢献などの立派なお題目が必要では」と身構えてしまい、筆が止まってしまう経営者様が非常に多いのが現実です。
ご安心ください。中小企業の目的地設定において、最初から飾った言葉は必要ありません。 今回は、経営知識ゼロからでも始められる、あなたの本音に基づいた「3年後の未来地図」の作り方をお伝えします。
なぜ「立派な経営理念」で筆が止まるのか
多くの経営者様が計画作りで挫折する原因は、「正しい言葉」を探そうとしてしまうことにあります。
「地域社会への貢献」「顧客第一主義の徹底」……これらは素晴らしい言葉ですが、心から湧き上がったものでなければ、日々の判断基準にはなりません。誰かの真似をした借り物の言葉は、忙しい日常の中で真っ先に忘れ去られてしまいます。
経営計画とは、本来「誰かに見せるためのもの」ではなく、「あなたが迷ったときに立ち返るための地図」です。 地図に必要なのは、美しさではなく「目的地がはっきりしていること」。 ですから、まずは誰にも見せないつもりで、あなたの「素直な欲求」を言語化することから始めればよいのです。
「3年後の理想」を箇条書きにする
では、具体的にどうすればよいのでしょうか。 おすすめしているのは、「3年後、こうなっていたら最高だな」という状態を箇条書きにするという方法です。これを私は「未来地図」と呼んでいます。
かっこつけない「本音」が最強のエンジンになる
例えば、動物病院の院長先生であれば、以下のようなメモ書きで十分です。
- スタッフが笑顔で働いていて、離職率が下がっている
- 自分も週に1日は完全に休みが取れて、家族と夕食を食べている
- クレーマー対応に追われず、信頼関係のある飼い主様だけで予約が埋まっている
- 院内の壁紙が張り替えられて、明るい雰囲気になっている
- 銀行の通帳残高が○○○万円になっていて、資金繰りの不安がない
いかがでしょうか。「これなら書けそう」と思いませんか? 実は、これこそが立派な「ビジョン(将来像)」の種なのです。
前回の記事で整理した「自社の強み」を活かして、この「理想の状態」をどう実現するか。そう考えると、ワクワクしてきませんか? 「週1日の休み」が目標なら、「誰かに業務を委譲しなければならない」という具体的なアクションが見えてきます。高尚な理念よりも、こうした「泥臭い本音の理想」のほうが、実現へのエネルギーは遥かに強力です。
今すぐできるアクション
この記事を読み終えたら、あるいは明日の朝一番に、以下のステップを試してみてください。
用意するのはノートとペンだけ
パソコンを開くと、どうしても「きれいに整えよう」という意識が働いてしまいます。 お気に入りのノートとペンだけを持って、病院や会社から離れたカフェに15分だけ行ってみてください。
そして、ページの真ん中に「202XX年(3年後)、私の会社(病院)はこうなっている」と書き、思いつくままに箇条書きをしてみましょう。 「こんなこと書いていいのかな?」という制限は一切不要です。 10個書き出せたなら、あなたはもう「目的地」を持った経営者です。そこへ向かうための手段(=計画)は、後からいくらでもついてきます。
さいごに
「経営計画」という言葉の重圧に押しつぶされる必要はありません。 あなたの事業は、あなたの人生を豊かにするためにあるはずです。
前回の「現状分析(SWOT)」と、今回の「未来地図」。この2つが揃えば、あとはその間を埋めるだけです。 まずは「3年後、自分はどう笑っていたいか?」を素直に描くこと。その小さなメモ書きが、嵐のような忙しさの中で、あなたを支える羅針盤になります。
もし、書き出した理想と現状のギャップに悩んだときは、いつでもご相談ください。一緒に最適なルートを考えましょう。
次の第3回では、今回描いた「目的地」に向けてどんなルートで進もうか、について考えるステップです。次回も是非お楽しみに!
今回の記事のポイント
・前回の「現状分析」に続き、今回は「3年後の目的地」を箇条書きで決める。
・「休みが欲しい」「スタッフを定着させたい」など、本音の願望でOK。
・「現在地」と「目的地」が揃うことで、初めて具体的な経営計画が動き出す。
動物医療 × DX × 中小企業診断士
大澤 正己

