未来を創る「経営計画書」作成の5ステップ

「目の前の仕事に追われて、来年のことなんて考える余裕がない」 「計画を作っても、どうせ絵に描いた餅になる」

多くの経営者様から、こうした声を耳にします。特に変化の激しい現代や、日々の診療業務が忙しい動物病院様では、じっくり机に向かう時間を確保するのは難しいものです。

しかし、経営計画書は単なる「書類」ではありません。荒波を乗り越えるための「航海図」であり、スタッフと心を一つにするための「共有言語」です。 今回は、難しく考えられがちな経営計画の策定手順を、5つのステップに整理してご紹介します。

経営計画を作成する5つのステップ

効果的な経営計画を作るには、いきなり数字を作るのではなく、順序立てて思考を整理することが大切です。

Step 1. 現状分析(自社を知る)

まずは、自社の「今」を客観的に見つめ直します。

  • 外部環境: 市場の動向、競合の変化、法改正など(機会と脅威)
  • 内部環境: 自社の強み(技術力、接遇など)、弱み(人材不足、設備老朽化など)

これらを書き出すことで、「何がチャンスで、何が課題か」が明確になります。いわゆるSWOT分析と呼ばれるプロセスです。

Step 2. 経営理念・ビジョンの再確認(目的地を決める)

Step 1で見えた現状を踏まえ、以前の記事でお伝えした「経営理念(ミッション)」と「ビジョン(将来像)」を再確認します。 「私たちは何のために存在し、どこへ向かうのか」。この目的地がブレていると、どんなに細かい計画を作っても迷走してしまいます。

Step 3. 基本方針と戦略の策定(ルートを決める)

目的地(ビジョン)へたどり着くために、どのような道筋を通るかを決めます。

  • 「既存顧客のリピート率を高める高付加価値戦略」でいくのか
  • 「新規エリアへ分院展開する拡大戦略」でいくのか ここで、やるべきことと「やらないこと」を明確にします。

Step 4. 数値計画の作成(マイルストーンを置く)

戦略を具体的な数字に落とし込みます。 売上目標だけでなく、利益計画、人件費、投資計画などを作成します。「精神論」ではなく「根拠のある数字」にすることで、経営の安全性が高まります。

Step 5. 行動計画(アクションプラン)への落とし込み

最後に、「誰が、いつまでに、何をするか」という具体的な行動予定表を作ります。 「売上を上げる」ではなく、「既存の飼い主様へ、春の健診案内DMを〇月〇日までに300通送付する」といったレベルまで具体化することが、実行力を高めるポイントです。

経営計画書を作る過程で最も価値があるのは、完成した書類そのものよりも、策定プロセスにおける「経営者の思考整理」と「スタッフとの対話」です。 手順を踏んで作られた計画は、必ずや組織の迷いを消し、力強い一歩を踏み出すための土台となります。

今すぐできるアクション

「SWOT分析」の簡易版をやってみる

紙を十字に区切り、以下の4つを各3つずつ書き出してみてください。

  1. 強み(自社・自院の良いところ)
  2. 弱み(課題だと感じているところ)
  3. 機会(追い風になっている世の中の流れ)
  4. 脅威(不安要素や競合の動き)

これを見るだけでも、次に打つべき手が見えてくるはずです。

さいごに

手順は分かっていても、「自分の会社・病院の場合、具体的にどう当てはめればいいのか?」「SWOT分析をしてみたが、客観的な視点が合っているか不安」という方もいらっしゃるかと思います。また、日常業務に追われる中で、これらをすべて一人で完結させるのは大変な労力です。

私は中小企業診断士として、経営者様の想いを言語化し、実効性の高い経営計画書に落とし込むお手伝いをしております。 「作成代行」ではなく、経営者様と一緒に考え、悩み、最適解を導き出す「伴走支援」を大切にしています。

まずは、現状のモヤモヤを整理するだけでも構いません。 「これからどう進んでいくべきか」を一緒に考えるパートナーとして、ぜひお気軽にご相談ください。

今回の記事のポイント

・経営計画書は荒波を越える航海図であり、組織を一つにする共通言語となる。
現状分析、ビジョン、戦略、数値、行動計画の順で思考を整理し具体化する。
・計画書の作成プロセスそのものが、経営者の思考整理と社内の対話を生む。

動物医療 × DX × 中小企業診断士
大澤 正己